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トミージョン手術後のリハビリプログラム(DriveLineBaseball監修)
PULSEthrow
2022/07/19
各フェーズ毎にPULSEとスピードガンを使いながら投球強度と球速を確認しながらリハビリを進めていきます。
従来のリハビリプログラムからアップデートされた内容となっております。
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目次
この記事はhttps://www.drivelinebaseball.com/2015/09/tommy-john-return-to-throwing-program/を参照しています。
はじめに
従来のトミージョン手術後のリハビリは下記のような内容で行われていると思います。
①手術後、装具を着用して屈曲/伸展の角度制限をする
②角度制限終了後、ストレッチやモビリティのプログラムを実施。
↳肘の動きを再獲得するための可動域訓練で徐々に筋力トレーニングを進めます。このプログラムはDrや理学療法士によって異なりますが、大体同じような流れです。
③「投球」プログラムを開始
※この記事のリハビリプログラムは「投球」を行えるようになってからのプログラムを行う際のポイントと改善点についてです。
従来のトミージョン手術後の投球リハビリプログラムの問題
下の画像(表)は従来のリハビリプログラムの大まかな流れです。

DrivelineBaseballの見解だとこの従来のリハビリプログラムには
4つの問題があるとのことです。
・投球数と投球強度に問題がある
・距離ごとの投球メニュー以外の投球数が把握でき ていない
・RPE(自覚的運動強度)でおきるギャップ
・痛みなどで投球できなかった時のプログラムの調整が難しい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【問題①】投球量と投球強度に問題がある

このプログラム最初のステップ1の投球では、2セットの「ウォームアップ投球(warm-up Throwing)」と「45フィート(約14ⅿ)間の投球が合計50球となっています。
ウォームアップ投球が15球ずつだと仮定すると、術後の最初の投球開始メニューで合計80球も投げていることになります。
この従来のプログラムで起こりえる最も多くの問題は、
痛みや倦怠感によって予定プログラムの投球量を達成できないという事です。
これにより、プログラムの開始、一時停止、再開という悪循環が発生し、 スムーズにリハビリが進行していかない可能性があります。
【問題②】距離ごとの投球メニュー以外の投球数が把握できていない
従来のリハビリプログラムは距離ごとのメニューの時のみで球数を設定しカウントするので、それ以外のメニューの投球数の把握がおろそかになる可能性があります。
また、遠投時の球速/ストレス値も把握できていない可能性があります。
例えば、最大50ⅿの遠投を行う際に徐々に距離を伸ばしていくと思いますが、
同じ25ⅿでも球速60㎞と球速90㎞の遠投では肘にかかるストレス値は違うはずです。
距離の延長でリハビリフェーズを進めていく従来のプログラムでは、
球速150㎞のプロ選手と球速130㎞の高校生で同じリハビリ効果をもたらすことは難しいと考えます。
【問題③】選手は指示した力感と同じ力感で投球することが出来ますか?(RPEのギャップ)
自覚的運動強度(RPE)を強度の尺度として使う時に問題が発生する可能性があります。
下記リンクの研究では、ピッチャーが投球する際の力感は、MAX球速と比較すると、力感と球速が相関していないことが示されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24664135/
60%で投げたつもりが、76%の力が生じていて球速はMAXの84%に近かったそうです。
なので、指示した通りの力感で実際には投げる事ができていない可能性が高いという事です。
【問題④】痛みなどで投球できなかった時のプログラムの調整が難しい
手術からの回復プロセスが順調な選手もいますが、そうではない選手もいます。
中には数週間、回復しない選手もいます。また、予定よりも早いスピードで回復する選手もいます。選手それぞれが復帰まで同じ回復スピードで進行していく事はありません。
理学療法士やトレーナー、Drからすると異なる選手の回復スピードに対応していくのは至難の業かも知れません。
選手それぞれが復帰まで同じ回復スピードで進行していく事はありません。
回復力が選手それぞれなのに加えて、投球量/投球強度=「負荷」も異なるので従来のプログラムに対する選手の反応も異なります。またプログラム以外の場所でも選手に対して負荷がかかる場面があります。
睡眠不足・栄養不足・長距離移動など。これらも選手の復帰までのスピードに与える要因の一つです。
アップデートされたリハビリプログラム(DrivelineBaseball監修)
選手それぞれのデータがテクノロジーの進化によって収集/把握できるようになったことによって従来のプログラムに+αで個別化されたプログラムを提供できます。
▼使用するテクノロジー
・PULSE=アームスピードと球数管理
・スピードガン=球速測定
★今までの経験と感覚に客観的なデータを組み合わせる事でアップデートが可能になります。
▼PULSEとスピードガンで確認するデータ
・投球量
・投球強度(ストレス値/球速/アームスピード)
・投球頻度
・投球量の推移
・投球強度の推移
・負傷前のデータから予想できる復帰時の最適な「ストレス値」
▼選手とのコミュニケーション
上記のデータを見ながら選手と次のようなコミュニケーションを取ることで選手のコンディションをより正確に把握することが出来ます。
・今日のトレーニング後の腕の疲労感
・今日の投球強度が低すぎた?・高すぎた?・最適だった?か
・投球数が少なすぎた?・多すぎた?・最適だった?か
▼プログラムの各フェーズについて
●プログラムフェーズ
・PHASE.1 低強度投球で投球数を増やしていく(4週間)
・PHASE.2 低強度投球ベースで、強度の高い投球を少し行い始める(6週間)
・PHASE.3 投球強度をより高くしていくが休養日も多めにする(6週間)
・PHASE.4 一度投球強度を下げる代わりに投球頻度を上げる。そして復帰日に向けて徐々に強度上げていく(試合の投球強度に慣れさせていく)(12週間)
※これらのフェーズでは、PULSEとスピードガンを使用して強度と量のデータを確認しましょう。
↳指標としてのPULSEアームスピードの使い方
アームスピードは、最大700RPMに達するまで投球強度の指標として使います。
700PPM以上まで投げられるフェーズに達することが出来たら、球速も併せて確認していきます。
新リハビリプログラムを使用したケーススタディ(事例)
DrivelineBaseballでこの新リハビリプログラムを使用して復帰することが出来た大学生選手の事例です。(あくまでも事例です。全ての選手にこのプログラムが当てはまるとは限りません。)
▼事例の選手情報
年齢:21歳
カテゴリー:大学生
ポジション:ピッチャー
▼ケガをした時の状況
大学入学時は133km、入学後152㎞まで球速がUPしたが、シーズン途中でUCL損傷し、トミージョン手術をする事にしました。
【新リハ】PHASE.1 低強度投球で投球数を増やしていく(4週間)
▶このフェーズの目標は、低強度の投球で投球数を増やしていく事です。
DriveLineでは、全ての選手の復帰プログラムで低強度の投球から始めて徐々に強度を上げていきます。

上記の表のような1週間の流れで最初の4週間のプログラムを実施しました。
このフェーズ1(4週間)では、週3回の投球日となり、PULSEでアームスピードを確認しながら投球強度を確認していきます。
事例では、下記のような範囲で4週間の投球強度を上げていきました。
▼スタート時のアームスピード:
平均200 RPM 最大250 RPM
▼4週目のアームスピード:
平均 350 RPM 最大450 RPM

投球数に関しては、右肩上がりに増やしていきます。下記範囲で球数を増やしていきました。
1日の合計投球数の範囲
スタート時:25球 4週目最終日:90球
【新リハ】PHASE2:低強度投球ベースで、強度の高い投球を少し行い始める(6週間)
このフェーズでは、週3日の投球日の内2日を高強度投球日にしていき、徐々に高強度投球日の強度を上げていきます。
事例では、(月)高強度/(水)低強度/(金)高強度の、週3日の投球ペースで進めていきます。

このフェーズから、アームスピードが700 RPMに達する投球が発生するので、700 RPMに達したら球速も一緒に管理するようにしてください。
事例では、下記のような範囲で6週間の投球強度を上げていきました。
▼スタート時のアームスピード:
平均350 RPM 最大450 RPM
▼フェーズ2の6週目のアームスピード:
平均600 RPM 最大 850RPM
▼スタート時の球速:
平均80㎞ 最大91㎞
▼フェーズ2の6週目の球速:
平均99㎞ 最大122㎞

平均アームスピードと球速が少しずつ上昇させていきました。
フェーズ2では、明確な球数制限はせずに、
下記のような範囲で球数制限をしました。
▶高強度日:60~90球
▶低強度日:90~120球
この時、事例の選手はほとんど範囲MAXの球数を投げていましたが、
投球以外のトレーニングの影響で体を動かすのが厳しかった日は無理に投げさせることと強度を上げることもしませんでした。
【新リハ】PHASE.3 投球強度をより高くしていくが休養日も多めにする(6週間)
このフェーズでは、1週間ごとに投球強度を設定するのではなく、
2週間ごとに投球強度を設定しました。
理由は、1週間ごとの設定だと、高強度日が2連続になってしまうからです。
必ず、高強度と低強度が交互に来るように設定してください。

フェーズ3では新たに2つの投球メニューを追加しました。
▶低強度でのブルペン投球
▶設定した球速をなるべく低いアームスピードで投げる
低いアームスピードで投げることをメニューにしたのは、体を効率的に動かせることを目標にしていました。
事例では、下記のような範囲で進行していきました。
▼スタート時のアームスピード:
平均600 RPM 最大850 RPM
▼フェーズ3の6週目アームスピード:
平均700 RPM 最大925 RPM
▼スタート時の球速:
平均99㎞ 最大122㎞
▼フェーズ3の6週目の球速:
平均111km 最大143㎞

フェーズ3の球数は
フェーズ2から変更せず行いました。
▶高強度日:60~90球
▶低強度日:90~120球
ただ、投球日以外のトレーニング(筋トレなど)で、筋肉痛や倦怠感が起きた日は、範囲MAXの球数を投げさせないように制限しました。
【新リハ】PHASE.4 強度を下げ、投球頻度を上げる。復帰日に向けて徐々に強度上げていく(12週間以上)
フェーズ4では、ブルペン時の投球強度を110㎞代に一旦下げます。
その代わりに投球頻度を上げて、復帰日に向けて徐々に強度上げていきます。(試合の投球強度に慣れさせていく)


事例では下記のような範囲で進めていきました。
▼フェーズ4開始時ブルペンの球速:
平均102㎞ 最大123㎞
▼フェーズ4終了時(復帰直前)のブルペン球速:
平均119㎞ 最大146㎞

フェーズ4は復帰直前のプログラムになるので、
フェーズ4終了間際には試合と同等の球速/強度に肘を慣れさせていきますが、
選手とコミュニケーションを取りながら、強度を上げるのが早いと判断した時は無理をせずに、
もう1週同じ強度で進めたりしながら次の強度に映るタイミングを見極めましょう。
実際に今回の事例でも、フェーズ4の時も高/低強度時の球数範囲をフェーズ3から変えずに進めましたが、
球速平均が126㎞を超える週になったタイミングで選手の腕の倦怠感が抜けない日が何日か発生したので、
その日はブルペン投球を行わずにリカバリー日に変更しました。
復帰後
復帰後もワークロード(負荷)をモニタリングしながら、
「投げ過ぎ」「投げなさ過ぎ」の状態にならないように、
最適なワークロードを実施しながらコンディションを管理してケガの予防とパフォーマンスの向上を目指しましょう。
▼ワークロードについての説明は下記リンクをご確認ください。
https://onsideworld.com/contents/acratio-acute-chronic-workload/
▼復帰後の最適なワークロードが簡単に確認できる機能「推奨1dayワークロード」については下記リンクをご確認ください
https://onsideworld.com/contents/setup/1day-workload/
▼PULSEセンサーのご購入はこちらから

https://onsideworld-shop.com/items/615c1074acbcb010b6d0515a
PULSEの運用について詳しく話を聞きたい方はお気軽にお問合せ下さい。
https://onsideworld.com/contact/